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ゆらぎのはなし

秋、こころとからだがゆらぐ日に
― 短くなる光と、セロトニンのはたらき ―

秋、涼しくなったのに、気分が晴れない。
やる気が、なかなか出てこない。
眠っても疲れがとれない。あるいは、いつもより眠い。
甘いものや、炭水化物が恋しくなる。

そんな声が増えるのが、秋という季節です。

背景にあるのは、日の光が短くなること。光が減ると、気分や眠りに関わる「セロトニン」というもののはたらきが、ゆっくりと変わっていきます。

ここでは、秋にこころとからだがゆらぎやすいしくみをやさしく見ていきながら、今日からできるセルフケアを5つ、お伝えします。

秋、こころとからだがゆらぐしくみ

日が暮れるのが早くなったと感じませんか?秋が深まるほど、日の光をあびる時間は、少しずつ短くなっていきます。この光の移り変わりが、こころとからだのゆらぎに、関わっています。

日の光をあびる時間が短くなると、脳の中のセロトニンという神経伝達物質のはたらきが、少しずつ弱まるといわれています。セロトニンは、脳の高ぶりをしずめて気持ちを安定させ、幸福感にも関わることから、「幸せホルモン」とも呼ばれています。

このセロトニンは、気分だけでなく、眠りにも関わっています。日中にはたらいたセロトニンは、夜になると、眠りをさそうメラトニンというホルモンに変わっていきます。日中に光をあびてセロトニンがはたらくことが、夜のここちよい眠りにもつながっているのです。

だから、秋に光が減ってセロトニンのはたらきが弱まると、気分の落ち込みや、眠りの変化があらわれやすくなります。眠りが浅くなる人もいれば、いつもより長く眠くなる人もいます。どちらも、根っこは同じです。日の光とセロトニンが、季節とともに変わっていくこと。秋から冬にかけては、疲れやすさや、眠る時間が少し長くなる傾向も知られています。

くわえて、秋は寒暖差や気圧の変化が大きい季節です。この変化は、からだを昼と夜で切り替える自律神経にも負担をかけます。自律神経の切り替えのしくみは、自律神経と、ゆらぎのしくみ でくわしくお伝えしています。

気分の波にも、しくみがあります

気分や眠り、食欲の波は、日の光とセロトニンのしくみから生まれる、自然な反応です。季節のうつろいに、からだとこころが静かに応えているサインともいえます。

しくみを知っておくと、その波と少し付き合いやすくなります。晴れない日があっても、それは季節にからだが応えているだけ。しくみが分かると、今の自分に必要なケアも見えてきます。

こころとからだをととのえる、5つのケア

秋のゆらぎは、朝と日中の過ごし方から、少しずつやわらいでいきます。今の季節にとりいれたいことを、5つご紹介します。

1.朝、日の光をあびる

秋は、朝の光そのものが減っていく季節です。起きたらカーテンを開けて、午前のうちに15〜20分ほど、光をからだに入れてみてください。雨や曇りの日でも、外の明るさは室内よりずっと強いもの。窓ぎわで過ごしたり、少し外に出るだけでも大丈夫。朝の光は、セロトニンのはたらきの起点になり、体内時計もリセットしてくれます。あわせて朝ごはんをとると、リズムがいっそう流れやすくなります。

2.日中、からだをリズムよく動かす

ウォーキングや階段、こまめに歩くこと。日中にからだを動かすと、昼と夜のリズムがつきやすく、夜の眠りにもつながっていきます。晴れた日は、朝の光をあびながら歩くと、光がセロトニンのはたらきをうながしてくれます。就寝の直前に激しく動くと、かえって寝つきにくくなるので、寝る前はゆったりとすごしてみてください。

3.トリプトファンを、食事にとりいれる

セロトニンやメラトニンのもとになるのが、トリプトファンという必須アミノ酸です。卵、大豆製品、乳製品、赤身の魚、バナナなどに含まれています。とくに朝にとると、日中にセロトニンがつくられ、夜にはそれがメラトニンへと変わって、夜の眠りにつながりやすくなります。

4.好きな香りを、そばに置く

香りは、五感のなかで唯一、脳にまっすぐ届くといわれています。香りの信号は、感情や自律神経に関わる脳の部分へと伝わり、気持ちのゆるみにつながります。心が落ち着く、好きだと感じる香りを、夜のひとときにそばに置いてみてください。深い呼吸とあわせると、一日の緊張がゆっくりほどけていきます。

5.「今日はそういう日」と受けとめる

気分の波は、日の光とセロトニンのしくみから生まれる、季節のものです。うまく晴れない日があっても、それはからだが季節に応えているサインです。しくみを知って、休みたい日は、からだの声のとおりに少しゆっくりと休んでみてください。

秋の夜に寄り添う、植物のちから。

夜は、一日の緊張をほどいて、休息へ向かう時間。植物療法では、こうして力を抜いていくことを「ゆるめる」と呼び、自律神経を整えるための大切なケアと考えます。

ゆるめたい夜に寄り添う植物として、たとえばこんなものがあります。
ハーブティーなら、カモミール、リンデン、ラベンダー。やさしい花の香りとおだやかな味わいで、就寝前の一杯にむいています。眠る1〜2時間前、部屋を少し暗くして、ゆっくりと。
香りなら、ラベンダー、ベルガモット、フランキンセンス。落ち着いた深い香りは、夜のリラックスのひとときにおすすめです。枕もとにひと香り、あるいは手首になじませて、深い呼吸とともに。

秋のゆらぎは、光のうつろいから生まれます。しくみを知ると、今の自分に合うケアが、少しずつ見えてきます。眠りが浅い夜も、いつもより眠い朝も、どちらも、今のあなたのからだの声です。

その声に、耳をすませる時間を持てますように。

参考:厚生労働省 e-ヘルスネット/厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」/公益社団法人 日本アロマ環境協会/鈴木七重『ゆるめる・温める・巡らせる』(エクスナレッジ)